2014年11月20日木曜日

17歳の「るつぼ」

いよいよ冬のはじまり・・
ぬくもりが恋しい季節です。

先週、劇団BDPの「彼女たち」というお芝居を観てきました。演劇部でアーサー・ミラーの「るつぼ」を演じることになった高校生たち。戯曲のなかの少女たちの悪意に呼応するように演劇部内でネットによるいじめが広がっていく...
「るつぼ」は1692年アメリカ、マサチューセッツ州セイラムの町で実際に起こった魔女裁判を題材にした戯曲で、17歳の少女たちの言動が魔女狩りを助長し、町を混乱に陥れていくというストーリーです。

17歳という年齢のもつ理由のない苛立ちとエネルギー...難しいテーマをどのように扱うのか興味がありましたが、「るつぼ」の解説と舞台稽古を織り交ぜながら、現高校生の演劇部の日常を並行して映し出す演出が、親世代からみると軽くなりがちな高校生コトバに、深みを与えていました。ちょっとしたムカつきは、リアルタイムで解決せず、時間がたってから匿名でネットに拡散。ゲームは当事者を自殺寸前まで追い込みます。そして標的は少々ずれた同級生から、いつも正しいウザい教師へ・・
周囲の大人の愛情は通じないのか。ひとり、ネット参加しない強烈な個性を持つ転校生がからみ、稽古で劇中の集団ヒステリーを体験するうちに、次第に変化していく「彼女たち」。最終的には彼女自身の力によって成長していく姿が描かれます。脚本は嶽本あゆ美さん。出演する高校生たちは、ほとんど小学生から児童劇団でキャリアを積んできた、現役の高校生です。

主役の転校生役、吉田香奈子さんは現役の高校2年生。一見線が細そうなのに、演技に入るととてもパワーがありました。最後に力のあるアビゲイルのセリフで終わるのもよかった。みな、難解な高校生コトバをこなし(現役だけど。。笑)後半に進むごとに学校の雰囲気、生徒同士のやりとりがリアルになってきて面白かったです。
 
同年代の子どもがいますが、子育ては親の方も自分の十代を思い出しながらの試行錯誤。ネットという怪物を簡単に操れる環境下の青春は、自分のそれとまるで違う気がして、戸惑いも多いです。
親を完全でないと悟るのが思春期だから、表面的にえらそうなことを言ってもスルーです。
人生経験も浅く、甘ったれて生きている彼・彼女たちも、大人を見る目はとても鋭い。
ずるい大人か否か。愛情があるか否かに関しては、とても感度の良いアンテナをいつもピンとたてているようです。
 ぼっちになりたくない・・・劇中でもそのセリフを何度も耳にしました。
自分の耳目で立てる大人を目指せたら、そんな恐怖から解き放たれるのに。。。
人のせいにするのが得意な思春期は、それを自分で気づかないと生きづらい年頃です。意外に大人は手を貸せなくて、ただじっと見守ることしかできないと実感していますが。。
舞台では最後に、一見無力にみえた大人たちが、ユーモラスに登場して生徒を囲み、温かい雰囲気に包まれます。


 
仲間外れって、小さい子ども社会にもあるもの..。
小さいときには、友達や大人がやってあげられることがたくさんあります。
ロジャー・デュボワザンの 『 みんなのベロニカ 』
10歳ぐらいまでの子ども向けの本ですが、恥ずかしいほど現実の社会の有り様が描かれ、
人の気持ちの醜さと愛らしさが交錯する絵本です。
小さいときに、愛らしいベロニカを通して感じて、経験しておくことも大切かもしれません。
レオ・レオ二の 『チ コと金色のつばさ 』 も外れる話ですが、
こちらはもう少し複雑に自ら変わっていくことの尊さが描かれ、
大人にもしみじみと響きます。画がまたとても美しい絵本です。
 


原作の題名、「るつぼ」というのは、さまざまなものが混ざり合って渦巻いているという意味の他に、「厳しい試練」という意味もあるそうです。
ある力によって、事実が歪められ、異端者にされてしまう不条理。歪められた事実の正当性はどうしたらわかってもらえるのか?原作「るつぼ」で、主役のジョン・プロクターは、最後の最後に名をとって死を選びます。時代や宗教的な背景の違いがあるにしろ、現代でも、大人になってから選択する道は、自分の価値観をもって、自分で決めるしかありません。

招待していただいた演劇で、思いがけず過去のいろいろを思い出し、振り返ることが出来ました。
まだまだいろいろあるかしら。。。; 
頑張れ、17歳。



B-プロに登録する子ども達も、60名を超えました。
 HPは来年1~2月リニューアル予定です☆
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