2018年7月15日日曜日

センダック×マザーグース

4月から絵本セミナーでは、コルデコットの絵本を順番に読んでいます。
コルデコットに惚れ込んでいたセンダック。

センダックは著書『センダックの絵本論』で
”マザーグースの歌に絵をつけることは多くの人がやっていることだが
ランドルフ・コルデコットに匹敵する仕事をした画家は一人もいない”と
書いています。

私は、センダックの解説が面白くて、コルデコットの絵本が大好きになりました。
セミナーでは全冊揃っていて読むことができるのですが、コルデコット賞として、
誰もがその名を知っているというのに、「ジョン・ギルピンのゆかいなお話」以外
の彼の絵本はいま、買うことも図書館で借りることもできない状況です・・・
残念でなりません。

コルデコットに憧れていたセンダックはマザーグースの歌を使って絵本を三冊書いています。
6月の絵本セミナーでは、そのなかの
『わたしたちもジャックもガイもみんなホームレス』をじっくり読みました。

 
『わたしたちもジャックもガイもみんなホームレス
  -ふたつでひとつのマザーグースえほん』

わたしたち ぼくたち みんな ホームレス
ゲームは ブリッジ、ダイヤがきりふだ
こねこは みんな わるものたちに つれさられ
ちいさい おとこのこは かみつかれ
つきは かーっとおこりだす。
できるのは かべのない いえだけです。
   ---「わたしたち みんなゆううつ」

ジャックと ガイの ふたり
ライむぎばだけに まいおり
ちいさなおとこのこをみつけて
かためのくろあざに ぎょっとして
なんだ こいつ なぐっちゃえと
ジャックがいうと、
やめろと ガイはとめて
このこに パンをかってやろうよ。
きみ ひとつかってよ。
ぼくは ふたつ かうよ。
そして ふたりで そだてようよ
なかまも みんな そうしているよ
      ---「ジャックとガイ」

このふたつの歌から、創作された絵本です。
本のカバーの部分には段ボールのような紙を使用し、旧約聖書からうまれた「辺獄への降下」という絵画そっくりの画が表紙になっています。題名は前にはなく後ろに,,,。めぐまれぬ子どもたちの背景には、赤ん坊が飢えている!といった新聞記事やアウシュビッツ強制収容所、トランプタワーらしき建物、不動産広告など、世の不条理を訴えるような文字や絵があちこちに描かれます。

この本は、大好きなセンダックの絵本でも、ちょっと手に取るのを避けたくなる特別な感じ(負の迫力のようなもの)をうけていた絵本でした。セミナーでていねいに読んでみることで、センダックが伝えたいことを感じることができた気がしました。

あまり読み聞かせたいと思う本ではなかったのですが、毎年一回は読む方もいるそうで、
機会があったら小学校でも読んでみたいなと思いました。



第153号「子どもと本」では、この絵本について詳細に解説したイギリスの児童文学者ジェイン・ドゥーナン氏の文章が、14ページにわたって掲載されています。読み応えたっぷり。
興味のある方は是非読んでみてください。

※『子どもと本』は阿佐ヶ谷の「こどものほんや」で購入できます。





『ヘクター・プロテクターと
うみのうえをふねでいったら
 ―マザー・グースのえほん』

ヘクター・プロテクター、みどりのふくをきせられて
おきさきさまの ごきげん うかがい
おきさきさまは ごきげん ななめ
おうさまもまた ごきげん ななめ
ヘクター・プロテクター おいかえされた

うみのうえを ふねで いったら
うみが ぼくの うえに きた
みれば ちいさい くろどりが 2わ
いっぽんの きのうえにいて
1わがぼくを わるものとよび
1わは ぼくを どろぼうという
ぼくは ちいさい くろいぼうをかまえ
くろどりのはを ノックアウト

訳者あとがきには、
うみのうえ~は水の上を歩こうとしたらおっこちたという意味で
ないはずのくろどりの歯をたたきおとした男のナンセンス歌を
センダックが独自の解釈で楽しい世界をつくり絵本にしていると書かれています。

センダックがイメージするとこうなるのかーー
この歌だけで、イメージを真っ白な紙に自分で描いてみると
おもしろいかも・・です(笑)




『ふふふん へへへん ぽん!』
  ーもっといいこと きっとある

この本はわりと長めのお話で、マザーグースの歌は、最後に少しだけ登場します。テーマは、ここではないどこか、センダックがいつも追い求める解放された場所。
『かいじゅうたちのいるところ』も『とおいところにいきたいな』もどこかへ行った後は戻ってきますが、このお話は戻りません。

冒頭から少々ショッキングなシーンで始まり、ちょっと不気味で不思議な世界に迷いこみますが、きちんとつじつまがあって最後はほっとするお話になっています。ハッピーエンドですが読後に一抹の寂しさに襲われるのは、私が母親だからでしょうか。その寂しさゆえか、私はつい何度もこのお話を読んでしまいます。
犬が本当に幸せなのか、読み落としはないか確認したくて.....

主人公の犬はセンダックがとても可愛がっていた愛犬がモデルです。(他の絵本にもちょこちょこ登場します。最後は病気で苦しんだ愛犬を安楽死させたという悲しいエピソードがあります。)

大好きなセンダック。
たくさん読めて楽しいひとときでした。

次回は、また戻ってコルデコットの絵本の続きです。



-----------------------------------------------------------

娘の診察日の帰り道、一緒に東京タワーに上ってきました。
思ったより気持ちがよくて、1時間くらい眺めていました★