2018年5月17日木曜日

魔法の黄色 マージョリー・フラック



月に二回楽しみにしている絵本セミナー。
月初めはくらべ読み、月末は絵本の歴史に沿って学ぶセミナーに参加しています。
どちらも主催してくださっているのは、子ども文庫の会の青木祥子先生。
今年で3年目になります。
新しい出会いはもちろん、知っている、よく慣れ親しんだ絵本であっても
毎回新しい発見があります。

今月はマージョリー・フラック。
アンガスシリーズ5冊と『おかあさんのたんじょうび』(Ask Mr.Bear)
と『あひるのピンのぼうけん』を読みました。
マージョリー・フラックのお話は、行って帰ってくる王道ストーリーを
横長の紙面を効果的に使った場面構成で楽しませてくれます。

シリーズものは何でも最初がいいと言われますが、全部通しで読んでもらうと
やはり最初の2冊『アンガスとあひる』『アンガスとねこ』が秀逸だなぁと思いました。
後3冊にくらべて画もストーリーも生き生きとしています。

このお話の最大の魅力は子犬アンガスの視線の高さ。
なんでもやってみたいのに、届かなかったり、ダメといわれたりして
できないことがたくさんある・・それはちいさな子どもたちのそれと同じ。
子どもたちはアンガスになってお話を楽しみます。

私がなにより心惹かれるのはこの作家の黄色の使い方。
この作家の黄色は魔法の黄色だなぁと思うのです。

黒犬のアンガスも白いあひるも大胆に黄色でかたどられ
外の地面は黄色一色。
絵本は白黒とカラーのページを交互に配していますが、
カラーページに黄色がないページはありません。


『おかあさんだいすき』(Ask Mr.Bear)
に出てくる男の子のダニーは、
顔も体も真っ黄色、髪も黄色でまっ黄黄。
最初見た時はぎょっとしました。

でもそれがいいのですね。
心温まるお話とリンクして、
黄色の画が心につよく残ります。


『アンガスとあひる』は知りたがりの子犬アンガスが、
庭の向こうから聞こえてくる音(実はあひるの声)の正体を知りたくて
外に飛び出し、あひるに遭遇。アンガスはあひるを威嚇して水飲み場を
横取りするのですが、逆にものすごい勢いで追っかけられて逃げ帰ると
いうシンプルなお話。

あひるの逆襲。。。これ、絵本そのまま。本当にものすごい迫力なのです。
シーシーシーシーシーシーシュ!!!



大昔になりますが、、、3歳の娘と一緒に、公園の草むらに腰かけていたら、
池で小学生3人が、あひるに石をなげてちょっかいを出しているのが見えました。
かわいそうだなと思った私は娘を置いて、注意をしに池のほうに。
声が届きそうなところまで来たところで、小学生たちが踵を返し
ワーッとこちらに走ってくるので、どうしたのかなと思ったら、
あひるが低姿勢でシュー!!!と声を上げながら
子どもたちを追いかけていました。

ぎゃーんと泣いたのは、草むらに座っていた娘。
振り返るとちょうど小学生の逃げ道に座っていた娘が、
突進するあひるの標的となり、足をガブリとやられていました。
時間にして30秒くらいの出来事・・;;

大した怪我にならなかったのは幸いでしたが、
小さい娘には恐かったことでしょう。
かわいそうでしたが、あひるのあっぱれな反撃に
私は心から拍手をおくったのでした。

公園に行くたびに慕っていたがあちゃんでしたが、
気性の荒さは子どもたちを刺激しやすかったのか・・・
数年後、地元の中学生に殺されてしまいます。
・・・・大変ショッキングな出来事でした。
しばらくの間公園の池の橋には、たくさんの手紙とお花が
絶えることがなかったのを記憶しています。

もえぎ野web文庫のイメージキャラクタのあひるは、がちょうのペチュニアをイメージして、当時文庫を運営されていた宮崎さんがお友だちに書いてもらったイラストですが、web文庫として引き継いだ時期が、があちゃんを偲ぶ時期と重なり、Gaakoと名前をつけて使わせていただくことになりました。

があちゃんは、もえぎ野web文庫のイメージキャラクタとして
今も私のなかにいます。



来月のくらべ読みセミナーは、引き続きマージョリー・フラックです☆




先月季刊誌『子どもと本』の第153号が
発刊されました。
モーリス・センダックの絵本
『わたしたちもジャックもガイもみんなホームレス』
について、イギリスの雑誌に掲載された
児童文学研究者のジェイン・ドゥーナンの文章が
青木祥子先生の翻訳で14Pにわたって掲載されています。
絵本の表紙の画はキリストが死と悪魔の支配を打ち破り、
旧約聖書の人々を天国へと救い出す姿を描いた
Descent into Limbo(リンボへの降下)そっくりとのこと。
センダック好きは必読。読み応えたっぷりです☆