2018年6月4日月曜日

ルース・クラウスとセンダックの絵本

ぼくに平手打ちを食らわせるように
して、ルースはぼくを一人前に
鍛えてくれたのです。
ルース・クラウスは、もうけ主義と
いうかんばしくない習慣に
染まるより以前にいた、
米国の子どもの本をゼロから
生み出した一流の、
すばらしい、非凡な女性です。
(モーリス・センダック) 
季刊「子どもと本140号」より
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5月28日の絵本セミナーでは、
ルース・クラウスとセンダックが組んだ絵本を7冊読みました。
ルース・クラウスとセンダックは親子ほどの年の差があります。
一緒に本を作ったのはルース・クラウスが50歳、センダックが20代半ばごろです。

ルーシー・ミッチェル女史が、大人と子どもの教育機関として高い志のもと、1916年に創立したバンク・ストリート・カレッジ。そこでは、子どもを学ぶことからはじめるためのーどんな環境が子どもたちの教育と成長に適しているのかーー保育園が併設されていました。その子どもについての本を創作するための創作家養成所に、ルース・クラウスやマーガレット・ワイズ・ブラウンがいました。
どの絵本にも、まず最初のページには、保育園で出逢ったたくさんの子どもたちと、先生方への感謝の言葉が述べられています。

二人の作品の特に素敵な3冊をご紹介します。

『あなはほるもの おっこちるとこ』
 ~ちいちゃい こどもたちの せつめい
 R.クラウス文 M.センダック絵 わたなべしげお訳
 岩波の子どもの本

たくさんの子どもたちが遊ぶかわいい姿がいっぱい。
センダックが下絵をみせたところ、男の子が男の子らしいことをして、女の子が女の子らしいことしかしていない絵に、ルースは激昂したそうです。
絵本の一番最後、本を枕にして足をひろげて、すやすやと寝ている女の子がいますが、これも最初は男の子だったとか。。。こんな女の子、たくさんいます(笑)


いぬはひとをなめる どうぶつ
ては つなぐために あるの
あなは ほるもの
だきあうために うでが あるのよ
みみは ぴくぴく うごかすもの
おしろは すなばで つくるもの
かいがらは うみの おとを きくもの
ねこは こねこをうんでくれる どうぶつ
かいだんは すわるとこ
ほんは みるもの

英語版の方がミニサイズで、絵がより繊細で可愛いらしいです。




『うちがいっけんあったとさ』
 R.クラウス文 M.センダック絵 わたなべしげお訳
 岩波書店


ルースとぼくの最高作品!とセンダックはいっています。
夜の夢のように、一人の人間の私的な空想にとって、その秩序のなさと、流れと、うやむやさは本質的なものであり、ルースクラウスがもっとも惹かれていったものは、そのことであった。ーーセンダック
この絵本を楽しめる大人は、なかなかいないかもしれません。小さなお子さんに読んでみてこそ、の絵本ですが、実は声に出すと、いわんとする世界観を大人も楽しめます。センダックは当たり前のように、この空想世界を存分に楽しめる人だったのだと思います。英語版のカバーにはルース・クラウスと若かりし日のセンダック二人の写真が掲載されています。

More! More! More! 
てれつく てんてん すててんてん! ちん とん しゃん!
わたなべしげおさんの訳も素敵です。





『ぼくはきみで きみはぼく』
 R.クラウス文 M.センダック絵 江國香織訳
 偕成社


上2冊より少し大きくなった子どもたち
各ページ多様な構図で、様々なシーンが
豊かに描かれます。

直接子どもの中から生まれてきた一冊の本
ーーモーリス・センダック

こんなことあったな...こんなことしたな...
こんな匂いのこんな世界があったな...
ちいさい人たちの、おともだちの世界。
ふたごっぽくなりたいの
ふたごっぽい くつと ふたごっぽいコートで、
もしどっちかの コートがチェックなら、
もうかたほうも そうでなくちゃ、ふたごっぽくーーー
どっちかのいえに とまるときには、
なにもかも おそろいにするの、ふたごっぽく、
そのまえに でんわでそうだんするわ。
ーーーもっているなかで いちばんにている はなもようのパジャマ
ーーーミルクはコップの ちょうどおなじせんまで
ーーーおはかをとおりぬけるときは、
ふたり どうじに いきをとめる、ふたごっぽく
たとえいっしょに いないときでも そうするの

             





季刊『子どもと本』140号

「ルース・クラウスとぼく 
  --格別のパートナーシップ」

モーリス・センダックが書いた文章
(山本まつよ訳)が掲載されています。
絵本創作時の話、児童書への思い、
敬愛するルースへの思い、
ルースが亡くなるときの様子と悲しみ、
大金を生み出す以外に興味がない
出版業界への落胆と怒りが綴られています。
センダックの言葉はこちらから引用しました。


子どものやわらかい空想世界にどっぷりつかってあっという間の3時間....
ものすごく濃い時間でした。
また来月が楽しみです😊



5月30日にいつも活動している
地元図書ボランティアのOGメンバーで
ご近所のスペースを借りて、プログラムを組み、
1冊ずつ絵本の読みあいをしました。
ベテランぞろいで、聴きごたえ十分。
私はバーニンガムの『コートニー』を読みました。
たくさんの刺激をもらって楽しいひとときでした。
地元での活動もガンバロウ☆