2018年12月26日水曜日

知らなかったハワイのこと


矢口祐人氏のホームページを制作しました。
矢口先生は東京大学大学院総合文化教授です。ハワイに住む親友の友人であり仕事のパートナーでもあります。アメリカ文化・日米文化史を研究されていて、ハワイに関する著書があり、何冊か読んでみました。

みなみのしまのだいおうは
そのなもいだいなハメハメハ
ロマンチックなおうさまで
かぜのすべてがかれのうた
ほしのすべてがかれのゆめ
ハメハメハ ハメハメハ
ハメハメハメハメハ

小さい頃よく歌っていたな・・。
南の島のハメハメハ大王って、ハワイのカメハメハ王だったんだ・・・

『ハワイ王国~カメハメハからクヒオまで』では、8代まで続いたハワイ王国の王様と、王を支える妻たちのエピソードが写真とともに綴られています。

一代一代の物語、なかなか覚えられない名前を紙に書きながら・・・どんな人だったのかなぁと想像するのが楽しくて、一気に読みました。日本との交流もあり、第7代王の姪のカイウラニ王女を、明治の皇室に嫁がせるという話もあったそうです。

1778年にジェームズ・クックがハワイへ来航して以来、捕鯨船の休憩地として様々な人がハワイを訪れるようになっていたそうですが、カメハメハ2世の頃からキリスト教の布教が始まり、各地に教会が建てられて、ハワイ古来の神々や文化、人々の意識に大きな影響を及ぼしていったというのがとても印象的でした。

5世までは血縁、その後6代7代8代王は選挙で選ばれますが、白人資本家層のクーデターにより、8代女王リリウォカラーニの時に王国は崩壊してハワイ共和国に。スペインとの戦争がはじまったことで、軍事拠点としての価値が最優先され、なかば強引にアメリカに併合されます。

魚が豊富でサメの神さまのいる神聖な場所として、ネイティブハワイアンに大切にされてきた真珠湾は、アメリカの軍港となり、日本の標的にされ攻撃をうけました。現在はアメリカ環境省によって「汚染地区」と指定されてしまうほどの環境破壊がすすんでいるそうです。

”リメンバーパールハーバー”は、ネイティブハワイアンにとって二重の喪失である、と書かれていました。


ーーアメリカの一部になるくらいなら、石を食べて生活した方がいい。

ハワイのフラにはそんな激しい心情を吐露する歌もあるそうです。
ハワイのフラについての著書『ハワイとフラの歴史物語』では、フラは男性を喜ばせるいかがわしいダンスなどではなく、いかなる冒涜をも許さない厳格で神聖な宗教儀式であること、近年、現代フラとともにフラカヒコ(古典フラ)が見直され、ハワイアンのための学校の卒業生から、多くのクム・フラ(フラを教える資格をもっている人)が育ち、フラの伝統が今も大切に守られているそうです。

伝統的なフラが引き継がれる仕組みが、社会にしっかりと作られていることに感動します。先生が実際にフラ教室を開く友人宅を訪ねたり、踊ってみたりの実体験のくだりも面白かったです。副題が、~踊る東大助教授が教えてくれた・・となっているので、とても上手なのだとばかり。。(笑)


『ハワイの歴史と文化ーー悲劇とモザイクの中で』では、1900年頃ハワイに渡った日本の移民についての章が心に残りました。日本人がハワイに渡った経緯やサトウキビ畑での重労働。人種の差別化により暴動が起きないよう白人に管理されていたこと。働けど働けどお金が足りなくて日本に帰ることができない男たちは、日本に写真を送ってお嫁さん探しをしたそうです。


工藤夕貴主演の「ピクチャーブライド」という映画が紹介されていましたが、映画は観れず本で読みました。

男性の写真だけで裕福な暮らしを夢見て海を渡り、写真とはまるで別人のおじさんが見合い相手と知り、思わず泣き出してしまう十代のリヨ。夫にも現地にもなじめないまま、重労働と友人の死を乗り越え、少しずつマツジ(夫)を受け入れ、子育てをしながらハワイで骨をうずめる決意をするまでの物語です。

マツジが優しい人でよかった。実話をもとに、日系アメリカ人の女性が作った映画です。




『奇妙なアメリカ』では、アメリカ国内にある様々なミュージアムが紹介されています。
進化論を否定し聖書の創世記の記述を科学的に立証することを試みたミュージアムや、核爆弾を押す体験ができる原子力実験ミュージアム、ハリケーンの被害を記録したミュージアムや9.11のミュージアムも。

そしてハワイのアリゾナ・メモリアル。真珠湾攻撃により沈められた戦艦アリゾナ号の真上に浮かぶ、白くて細長いミュージアム。床のガラス窓からは、海底のアリゾナ号が見えるそうです・・・・

歴史上の出来事がどのように記録されているのか、ミュージアムの入口からなかの様子まで丁寧に描写され、その掲示のされ方から見えてくるアメリカを探っています。


今度ハワイに行ったら、カメハメハ大王像やビショップ・ミュージアムに行ってみたい。そして必ずアリゾナ・メモリアルに行こう。

恥ずかしながら・・12月8日という日を意識したのは、今年が初めてでした。
14日から始まった埋め立て工事のニュースが、真珠湾の歩みと重なります。技術が進歩して、すさまじい殺傷能力をもつ兵器が次々に製造されても、平和の守り方は100年前と何もかわっていない...。


ハワイ州庁舎には、カメハメハ3世のこんな言葉が刻まれているそうです。

ーー国家・土地の命は、正義によって守られる。



エチオピアに伝わる昔話、「黄金の土」の一節を思い出しました。

王さまのめしつかいが、船にのって帰ろうとする外国人の靴をぬがせて、靴底の土をていねいにこすりとるのですが、その理由を聞かれてーーー・・・・

ーーあなたがたは、とおいところにある、強い国からやってきました。そして、エチオピアが、世界で一ばん美しい国であることを自分の目でごらんになりました。この美しい国の土は、わたしたちにとって、なによりも大切です。この土の中にたねもまけば、なくなった人もうめるのです。

わたしたちは、つかれたときに、その上によこたわって休み、また、平原では、その上でウシやヤギをかうのです。谷から山の上につづいている道も、平原から森の中に通じている道も、みんなみんな、わたしたちの祖先の足と、わたしたちの足と、そして子どもたちの足でふみかためたものなのです。

エチオピアの大地は、わたしたちの父であり、母であり、きょうだいなのです。
わたしたちは、あなたがたを、あたたかくもてなしたし、めずらしいおくりものをさしあげました。

けれども、エチオピアの土は、わたしたちのもっているもののなかで、一ばんたいせつなものなのです。ですから、たとえ、ひとかけらの土でも、さしあげることはできません。
      
『山の上の火~エチオピアの楽しいお話』(岩波書店)より




ホームページの美しい写真はすべてご本人が撮影された写真です。
ブログトップはそのなかの真珠湾の写真をお借りしました。

友人のサイト同様に英語と日本語のページがあります。素敵な写真のスライドと著作本の紹介もあるので是非覗いてみてください。

※矢口祐人オフィシャルウェブサイト
http://yaguchiyujin.com/















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